2009年6月25日木曜日

LITTLE SHIP

グレン・ティルブルック&クリス・ブレイドというクレジットなので、この曲の作詞はグレンの担当だと思われますが、内容的にも、やがて独り立ちしていく自分の子どもたちへ捧げられた歌として、きっと個人的な思いが込められているのでしょう。息子たちが一人ずつ乗った小さな船の一群が港を出て行くのを、高台から見守っている父親の姿が目に浮かびます。

子どもを持つミュージシャンが、自らの(子育てではなく、その後の)子離れをテーマに歌うというのも、ちょっと珍しいかなという気もしますが、ロックやポップスのソングライティングも、ミュージシャンの年齢が上がっていくとともに、そういう成熟の時代に到達したということかもしれません。

歌詞だけではなく、ゆったりと熟成されたメロディも相まって、アルバムを締めくくるにふさわしい、味わい深い曲だと思います。正確には、この曲のあとに、歌詞のないインストの「TOO CLOSE TO THE SUN」(スパイ映画のテーマ曲みたい?)が続きますが、そちらはおまけのアンコールみたいなものですよね。

タイコウチ


「小さな船団」

小さな船団が船出する、六分儀を太陽に合わせて
人生の厳しさと楽しさについて、きみにはしっかり教えたつもりだ
きみはまもなく命綱から我が身をはずし、ぼくの手から静かに滑りだしていく
きみが生まれ落ちて息をした瞬間から、ぼくは命のかぎりきみを愛し続ける

小さな船団が船出する、海図にはない未知の海域へ
リトル=ボーピープやバーズアイ船長の娘たちに会うのかな
これから何が起こるかわからないが、きみの話はいつだって聞いてあげるよ
さあこれからは、良いことも悪いことも、全部自分で考えて決めることなんだ

デッキの排水口、甲板長、嵐に襲われる港
ボイラーの火はまだ赤く灯り暖かい
配給食はキャビアとクウォーン
きみが誰を好きになったって、自分で選ぶ人なのだから問題ないさ
きみはただ独りで冒険していくんだ

小さな船団が船出する、希望あふれるハッピーエンドに向けて
そのときどきにきみが使うお金は、ぼくたちのものだけれど
出費がいくらかなんて計算したこともない
うれしいけれど、ちょっと寂しくもなるな
でもこれはぼくが渡らなければならない橋のひとつ
さよなら、ぼくの小さな船団よ、さよなら、ぼくの小さな船団よ


*六分儀(sextant):航海時に星の高度を測定する器械
*リトル=ボーピープ(Little Bp Peep):イギリスの伝承童謡で、番をしていて羊に逃げられてしまう女の子の名前
*クウォーン(quorn):キノコからつくられた肉の代用食

(訳:タイコウチ)