2008年11月29日土曜日

THE PRISONER

夫に虐げられる妻が、そこから脱出する、もしくは反撃するという内容は、クリスが好んで取り上げ、多くの曲で変奏されてきたテーマです。

アルバム「BABYLON AND ON」(1987年)では、「TOUGH LOVE」のすぐあとにこの曲が続きますが、最初は「EAST SIDE STORY」(1981年)の「WOMAN'S WORLD」、そして「COSI FAN TUTTI FRUTTI」(1985年)の「KING GEORGE STREET」、次に「BABYLON AND ON」(1987年)の「TOUGH LOVE」と、この「THE PRISONER」ときて、さらに「SOME FANTASTIC PLACE」(1993年)の「JOLLY COMES HOME」、「RIDICULOUS」(1995年)の「THE GREAT ESCAPE」と、本当にクリスのお気に入りのモチーフなのですね。

タイコウチ


「プリズナー」

男は彼女を連れ去り
司令官のようにふるまう
ゲームのルールはいつもおなじみ
彼女にトースターややかんを与えて遊ばせてやる
自分は日がなのんびりするために
囚人から遠く離れたところで

彼女は星占いを見て、男は大衆新聞(The Sun)を読む
彼のIQが21に満たないのもむべなるかな

自分がどれほど幸せそうに見えるかを
彼女にわからせようとしているこの男
自分が彼女というケーキとって
よけいな添え物だとは思いもよらない
もしも誰かがかわりに料理をしてくれるなら
彼女はどんなにうれしいことだろう
結婚生活をこんがりと焼き上げる方法を
男は彼女にわからせようとしている

ケーキのようにこんがり焼けてはいるが、仕上げに使うやすりがない
人生を生き甲斐のあるものにすために不可欠な道具がない

彼女は服役中の孤独な囚人なんかじゃない
生涯をかけてこの男を愛し、大切にしなければいけないのか
手に入れて、捕まえて、家に閉じこめて
男には彼女の気持ちなどこれっぽっちもわからない
死がふたりを別つまで愛することの意味なんて

男はあちこち探すが
彼女はどこにも見つからない
そしてふと気がつくと
自分の夕食が焦げついているようだ
あたりには焼け焦げた匂いが漂い
街には逃げだした囚人がいる
椅子に腰かけた男は
気がかりな表情を浮かべるが
夕食を食べ損ねるかもしれないと気がかりなだけ
監獄を脱走した彼女は、必死で走り出す

(訳:タイコウチ)