2008年12月1日月曜日

THIRD RAIL



1993年のアルバム「SOME FANTASTIC PLACE」は、久々のポール・キャラックの復帰に加え、エルヴィス・コステロのバンドからピート・トーマスが助っ人で参加して、演奏と楽曲ともに充実した作品集となりましたが、その中でもこの「THE THIRD RAIL」は、最近にいたるまでライヴの定番曲となっているようです。今年の夏に出たスクィーズの「BBCセッションズ」でも、なぜか2ヴァージョンも収録されていました。

初期のビートルズを思わせる躍動感あふれるバンド・サウンドに乗せて、何が歌われているのかというと、行き詰まった恋人たちの愛の終焉を列車になぞらえて…といいたいところですが、これもどうやらクリスからグレンに宛てた、もうこれ以上いっしょにバンドはやっていけないね、というメッセージとして読むことができそうです。そんなことをこんなに凝った歌詞にしないとパートナーに伝えられない不器用なクリス、そんな歌詞をずっとずっと歌いつづけてきたグレン。ああ、スクィーズというか、このふたりのソングライティング・パートナーってほんとに妙な関係だったんですね。ともかくもふたりが仲直りできてほんとに良かった。

ちなみに、「第三のレール(third rail)」というのは、電車そのものが上を走るレールではなく、電車に電力を供給するためにしかれているレールのことだそうです。電気が流れてこないと、当然電車は止まってしまうというわけです。

タイコウチ


「第三のレール」

きみのことを愛すれば愛するほど
気にかければ気にかけるほど
ここに問題がないふりを
することはできない
今いるこの場所からどこまで行けるのか
お互いによくわかっているはず
これまでのぼくたちの暮らしは
いきあたりばったりでも楽しかった
でも今はもう友情も行き詰まり
悲しい思いがつのるだけ
ぼくたちの愛はまだ線路の上を走っているが
もう第三のレールはない

月が高くのぼり
太陽はもう沈んだ
きみとつきあいはじめて
もう百万回以上くりかえされたこと
ぼくたちの人生はまだ続くが
もう同じようにはいかないだろう
ふたりでいっしょにいると
愛は痛みを覚えるだけ
互いを気づかう言葉があれば
愛は生き残れるが
第三のレールなしで
ぼくたちの愛にこれから先があるのだろうか

空には白い綿のような雲が現れ
風に吹かれて木々はたわむ
ぼくたちがこの愛に別れを告げるとき
それがまるで神聖なる牛であるかのように
空高きところに天国があり
足下深くには地獄があるように
ぼくたちを駆動する第三のレールがなければ
もうどこへも行けないのははっきりしている

のど元にこみあげてくるものがあって
うまくしゃべれないのだけれど
ぼくたちの愛は黄昏どきを迎えた
だからもうこれでおしまいにしよう
ぼくたちがプラットホームでキスをすると
ドアがゆっくりと閉じる
まるで舞台の終わりに引かれる
劇場のカーテンのように
お互いにもう終わりだとわかっている
なぜだかうまくやれなかった
第三のレールなしに
愛は同じところをぐるぐる回るだけ

(訳:タイコウチ)