2015年3月19日木曜日

DENNIS

「デニス」

人生なにも問題ないと思っていたのだろう
いまさらぼくも知らなかったなんて言えない
ぼくが音楽を始めたときにはもうあらかた終わっていたんだ
もうお楽しみにも新鮮味がなくなっていた

髪型がフラットトップで、鼻っ柱の強かったホーソーン出身の男の子
みんなの憧れだった
勝手気ままに自由を愛し
当たり前のように人生はトントン拍子だった

今夜はブラックバーンでのコンサート
みんなのリクエストに応えて歌を歌う
寛大な気分のときは人の気持ちもわかる
燃えていたろうそくも、やがては消えていく

髪型がフラットトップで、鼻っ柱の強かった…

彼は優雅で、気難しくもあり
パーティをやっては新しく誰かと知り合う
片手の5本の指で数えながら
失望が積み重なっていく
狂ったような目で叫び声を上げる

人生なにも問題ないと思っていたのだろう
いまさらぼくも知らなかったなんて言えない
ぼくが始めたときにはもうあらかた終わっていたんだ
もうお楽しみにも新鮮味がなくなっていた

髪型がフラットトップで、鼻っ柱の強かった…

(訳:タイコウチ)


 デニスというのは、実はあのビーチボーイズのデニス・ウィルソンのことなのです。ホーソーンというのは、ビーチボーイズのウィルソン兄弟が育ったカリフォルニアの故郷の町の名前ですね。

ビーチボーイズの中でただ一人だけ実際にサーフィンができたというデニスは、1983年に酒に酔ったままヨットから海に落ちて亡くなりました。まだ39歳でした。

「ぼくが音楽を始めたときにはあらかた終わっていたんだ」というのは、歌い手(おそらくグレン)がレコードを出して本格的な音楽活動を始めたころ(70年代後半)には、デニスの方はもう酒浸りで下り坂の日々を送っていて、音楽どころではなかったということなのでしょう。


ミュージシャンが自分の敬愛する別のミュージシャンの実名を挙げて歌うというのはときどきありますが(グレンにはランディ・ニューマンのことを歌った曲もありましたね)、この曲もパーソナルな視点が織り込まれたしみじみといい歌詞だと思います。