2006年9月10日日曜日

HOSTAGE

さて、スクィーズの懐メロばかりでなく、最近のソロの作品も聴いておきまし ょう。グレン・ティルブルックの今のところ最新作「transatlantic ping pong」から、「HOSTAGE」という曲をとりあげます。

かつての恋人の家に夕食に招かれて、懐かしくもちょっと気まずい思いをしつ つ、なにやらDVの気がある現在の夫と彼女の関係を目の当たりにして、「君は ほんとに幸せなのかい/だれかの人質(hostage)になってるみたいだよ」、な んて未練がましい男心を綴った歌詞は、クリスのペンによる、と言われれば信じてしまいそうですが、もちろんグレン本人の作詞です。この曲をはじめて聴いたときは、なんだ、グレンだってクリスに負けない素晴らしい詞が書けるんじゃないかと思ったものです。

ちょっと、エルヴィス・コステロの初期の名曲「ALISON」を思わせるシチュエ ーションでもありますね。コステロは、結婚した元の恋人に「この世界はお前をだめにしていくだけだ(You know this world is killing you)/おれはまだ本気だぜ(My aim is true)」とやけ気味に(?)迫りますが、グレンは、 元恋人の現パートナーのDVに言及して、「彼がいつもあんなに怒りっぽい奴ならば、ぼくにはきみのことを心配すべき正当な理由が2つある」とひそかに心のなかで思いを新たにします。果たして歌い手は、ここで正義と真実の愛に目覚めるのでしょうか。


「人質」

ぼくたちがつきあっていたのはずいぶん昔のこと
何年かは楽しくすごしたけれど その楽しさもやがて忘れてしまった
お互い別れるつもりなんてなかったはずなのにね
今となってはみんな昔話
ぼくたちは大人になり 勇敢にも友だちとしてやりなおそうというわけだ
きみの家に夕食に招待された

ぼくたちは席につき、飲み物を片手に知り合いの近況を伝えあう
なんだか落ち着かないけど、きみが誘ってくれたことには感謝してるよ
しばらくしてきみのパートナーが煙草を吸うために席をはずす
もどってきた彼が言う
「ちょっと疲れたから、悪いけどソファで横にならせてもらうよ」
きみの家に夕食に招待された

きみの顔には疲れがみえる
ここはきみのいるべき場所じゃない
きみは幸せなのかい そうよときみは言うけれど
そうは思えないよ
こんなきみの姿をみても全然うれしくなんかない
きみはまるでだれかの人質になってるみたいだから

テレビではつまらない番組がだらだらと続いている
彼はぐっすり眠っている
「うるさい」と突然叫んだ彼の声にきみはびくりとするが
いつのまにか彼はまた高いびき
ふたりで皿を片づけていると、きみは気まずそうに
ごめんねと小さな声で言う
できれば見たくなかった、こんなきみの今の暮らし
きみの家に夕食に招待された

きみの顔には疲れがみえる
場違いな所にたどりついてしまったみたい
きみは幸せなのかい そうよときみは言うけれど
そうは思えないよ
こんなきみの姿をみても全然うれしくなんかない
きみはまるでだれかの人質になってるみたいだから

彼がいつもあんなに怒りっぽい奴ならば
ぼくにはきみのことを心配すべき正当な理由が2つある

(訳:タイコウチ)

英文の歌詞はこちら