2006年9月16日土曜日

LABELLED WITH LOVE

1981年の「EAST SIDE STORY」に収められている「LABELLED WITH LOVE」は、スクィーズ時代から、ライヴではサビのところでお客さんの大合唱になる定番曲です。当時のニューウェイヴな流行とはかけ離れたカントリー・スタイルの曲ですが、プロデューサーを買ってでたエルヴィス・コステロの強い意向でアルバムに収録されたとのこと。クリスもグレンも、当時コステロの影響があってカントリー・ミュージックに耳を開かれたとインタヴューで答えています。

歌の内容は、第2次世界大戦中に知り合ったアメリカ兵と結婚し、遠く故郷を離れテキサスで暮らしていたイギリス人女性が、夫と死別し、帰国したものの、ひとり寂しく老後をすごす、というストーリーものです。二十歳そこそこで想像力だけでこんな歌を書いてしまうクリスは、やはりただものではありません。

ちなみに、コステロの「KING OF AMERICA」(1986年)に収められている「AMERICAN WITHOUT TEARS」という曲は、この歌をヒントに書かれた歌じゃないかなあと思っています。たしか、戦後アメリカに渡り、結局故郷へは戻らなかった(涙もないアメリカ語を話すようになってしまった)女性の話でした。そういえば、コステロの「Veronica」という曲(ポール・マッカートニーとの共作)も、老女の回想を通じてイギリスの歴史を見るというような内容で、やはり着想は似ているような気がします。

タイコウチ


「想い出は愛という名のボトルに詰めて」


彼女は新しいウィスキーのボトルの封を切り
ろうそくをともした物置小屋の中 足を引きずって歩く
青くなった指をミトンの手袋で隠した彼女はまるで魔女のよう
猫のような匂いをさせた彼女は 近所の人のことを嫌っている
白黒テレビにはもう長いこと画像がうつらない
壁にかかった十字架は昔から飾りっぱなし
郵便屋が差し押さえの最後通告を持ってくる
彼女は銀の食器とプードルの置物を売りはらうことにする

飲んでは昔のことを想い出す 私と自分と自身のために
時計のねじを巻き
棚のほこりをはらう
愛してやまないのは失ってしまった故郷のこと
だから昔の想い出はボトルに詰めて
「愛」と書いたラベルをはっておく

戦争中はアメリカ軍のパイロットだった彼が
爆撃に出かけるたびに心を弾ませた
テキサス出身の彼と結婚して彼の農場へと住まいを移した
遠い異国の地で愛とは試練であることを学んだ
夫の酒量は増え、彼女は母親になった
いずれ自分も夫にとっては女のうちの1人になるとわかっていた
夫は食べるほどに歳をとり 飲むほどに理性が失われていった
顔には自信があったので いつもこぎれいにだけはするよう気をつけた

夫はいかにもカウボーイらしく、酔っぱらって寝ているうちに亡くなった
夏の最中、ベランダのポーチで
残された彼女は海を渡って家族のいる国へと帰った
でもみんな砂だらけの街へ引っ越していた
1人でもとの家に住むことにした 友だちも親類もなく
自分の歳のことは忘れるように生きてきた
カビのはえた肘掛け椅子に腰をかけ みんなのことをののしる
彼女を捨てていった昔の友だちのこと 
そして彼女はボトルからウィスキーを飲む

(訳:タイコウチ)


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