一昨年の東京公演は1曲目が想定外のこの曲で始まって、しばらく曲名を思い出せずにとまどいました(笑)。名盤といわれる81年のアルバム「EAST SIDE STORY」からですが、正直なところこの曲の歌詞はほとんど意識したことがなかったのでした。にもかかわらず、グレンはみんなに最後のコーラス「鉄砲のような勇気があればもう勝ったも同然(Heart like a gun was just half of the battle)」を無理矢理(?)歌わせようとしてましたね(笑)。
内容は、若い恋人たちのデートもので、「SLAP AND TICKLE」の姉妹曲という感じです。プロデューサーのエルヴィス・コステロが、この歌詞をずいぶん高く評価していたという話です。細部の描写にいかにもイギリス人的なところがあるんでしょうね。
タイコウチ
「ピカディリー」
彼女は誰かの家の暖炉の上に飾られた写真なんかじゃない
紫色のドライヤーを手に タオルにくるまって腰かけている
彼女はぼくとタメをはろうとしているのさ
彼女はおっぱい(cupcakes)をブラでおさえてジャンパー・スカートをはく
心配性のお母さんに遅くなるからと言っておく
彼女はピカデリーでぼくと待ち合わせ
入口には施しを求めるのっぽのフォーク歌手
善意にあふれた世の中について歌っている
足下の帽子には5ポンドと10ペンスの投げ銭
彼女は会社のことや洋服のことを話す
自分の笑顔が印象的だと思っている
だからいつか食事でもおごってあげようか
見知らぬ人たちがわけのわからない話をしているところにぼくたちも並ぶ
どんな恋愛関係にある人たちも愛については関心がある
並んでいる人たちはみんな今晩の舞台を見に来ている
ぼくの後ろの男が連れの若い女に話している
彼女にもうすぐ赤ちゃんが生まれるので彼は喜んでいる
彼の奥さんにはうれしい話じゃないが、彼女も最近は?
彼女が疲れたというから急いで外に出る
雨の中、インド・カレーを食べに行く
ろうそくの明かりをともした「タジ・マハール」というお店
ナプキンで口を拭いてタクシーを呼んだ
誘うような目にあそこが緊張するが気分はリラックス
ぼくの頭がずるい役を演じた
タクシーは夜の町を通って家路につく
ポルノ映画やトリニ・ロペスのネオン・サインには気づかぬふり
彼女のからだに腕を回すが ぼくの演技は最悪
ぼくたちは二人組の泥棒みたく台所からヒーターのある居間まで忍び歩き
「沈黙の音(the sound of silence)」をかけてキスをする
さあつかまえた、恋人はぼくの腕の中
ドアが少し開き、心配そうな声がする
お母さんはカレーの匂いをかぐこともなくベッドに向かう
ぼくたちの秘密の恋愛関係は一歩前進
アダムとイヴのようにぼくたちはリンゴをかじった
ポケットの中で小銭が音を立てる
鉄砲のような勇気があればもう勝ったも同然
(訳:タイコウチ)
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