TOUGH LOVE
野崎さんも以前取り上げていたこの「TOUGH LOVE」は、「KING GEORGE STREET」に続いて、アルコールによる家庭内暴力と愛によってそれに打ち勝と うとする女性を扱っていますが、このテーマはこのあとさらに「JOLLY COMES HOME」や「GREAT ESCAPE」へと引き継がれます。この歌は、一応ハッピーエン ドで終わっているので、歌詞の展開としてはちょっとストレートに過ぎるかな という気もしますが、聴いていて安心できるので、それはそれでいいですね。 Tボーン・ウォルクによるアコーディオンが、この曲にしっとりとした温かみを加えています。
タイコウチ
「決してくじけない愛情」
空っぽの部屋で彼女は座っている
彼女の表情がすべてを語っている
泣きはらした目のまわりにはあざがあり
悲しみの涙がこぼれ落ちる
彼は彼女を何度もなぐったり叩いたり
彼女のことを馬鹿呼ばわりもした
空高く舞上がる凧のようにまた興奮している
決してくじけない愛情が必要だと彼女にはわかっている
自分のつれあいの愛情を助けだすために
凍てつくような車のなかで彼は座っている
彼女は暖かいベッドのなか
明けてきた空の冷たい光が
窮屈に体を折り曲げ疲れはてた彼の姿を照らす
彼はつま先立ちでふらふらと家のなかに入り
コーヒーを淹れる
体が震えながらも汗がにじみ出る
決してくじけない愛情が必要だと彼女にはわかっている
自分のつれあいの愛情を助けだすために
2人は何度も話し合うが
問題を整理するのはたやすいことではない
彼女はもうがまんがならない
彼が嘘をついては部屋からこっそり抜けだし
誰かがなくした風船のように戻ってくることに
空になったカップには紅茶の葉が残っている
彼は無表情のまま
テレビではコマーシャルをやっている
彼はまた彼女の腕のなかに戻ってきた
もうドラッグも酒もやらない
沈みがちだった彼女の気持ちもなんとか落ち着く
彼がまた家に戻ってきてくれたのだから
決してくじけない愛情が必要だと彼女にはわかっている
自分のつれあいの愛情を助けだすために
2人は長いこと時間をかけて話し合った
すべてが元どおりになると思えるまで
自分の心のなかにあった決してくじけない愛情が
あの苦しみを溶かしてくれたのだと彼女は思う
(訳:タイコウチ)