「EAST SIDE STORY」に収められたこの曲は、台所という王国に閉じこめられた家庭の主婦がつかのまの叛乱(?)を起こすという内容です。イギリスの家庭生活の細部をリアルに描く「台所の流しポップ(kitchen-sink pop)」と呼ばれたスクィーズの典型的な1曲と言えるでしょう。サウンド面ではちょっとビートルズっぽい感じがしますね。
タイコウチ
「女の世界」
彼女には、王国の王冠という栄誉が与えられている
彼女はそんなものいらないというけれど キッチンという名の王国で
ステンレスの上には彼女の煙草とマッチが並ぶ
ラジオで知っている曲がかかるとサビに合わせて口笛を吹く
でも不機嫌そうな表情で
アイダーダウン(羽毛)のセーターを着て
束縛されている
でも王冠をかぶるのはそれほど悪い気はしなかった
彼女の作る料理は少しばかり東洋風
キッチンの窓を蒸気で曇らせて、鉄板の上で卵を焼いている
ぴかぴかの台所用品のカタログをながめる
新しい科学の発明によってまた1つ台所仕事がなくなっていく
ロブスターつかみ
オムレツ専用フライパン
王国にいると王冠がジャムのようにくっついて離れない
それがどうしてかがよくわかる
夫は忙しくて、彼女はないがしろにされてきた
問題を解決しようとあれこれ計算しても、いつも却下されるだけ
彼女の心から火花が散る
賢明にも
王冠は暗いところに置きっぱなし もうここは王国ではない
王国の栄誉にもううんざりした彼女は王位を返還する
バーのカウンターに座り、今日一日の愚痴を並べる
玄関から千鳥足で戻ってきた彼女の様子に
家族はおっかなびっくり
彼女は自分でサンドウィッチを作って食べ
家族が部屋の入口から見守るなか
ベッドへ向かう
脚を投げ出したまま
何も言わずに黙っている
頭の上に載せる王冠はなく そこにはもう王国もない
トースターのスイッチを押す
ここは女の世界
ベッドのシーツをきちんと折り込む
ここは女の世界
ハンガーからエプロンをとる
ここは女の世界
頭から王冠を撃ち飛ばせ
ここは女の世界
(訳:タイコウチ)
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