2008年12月5日金曜日

SLAP AND TICKLE



ライヴでもよく演奏される初期の代表曲ですが、まさにクリスお得意の恋人観察日記もので、アルバム「EAST SIDE STORY」の「PICCADILLY」の前身に当たるといってもいいでしょう。ぎこちない恋人たちの物語が、これでもかというほど饒舌に言葉が詰め込まれて、性急なタテノリ・ビートでラップのように歌われます。細部にこだわったこういう歌詞を聴くと、特に地元の人たちは、まるで自分たちのことみたい、と思って共感するのでしょうね。実際クリスは、特に初期の頃は、自分のまわりで見聞きしたちょっとしたエピソードをモデルにして詞を書いていたということです。

ちなみにタイトルの「スラップ・アンド・ティックル(slap and tickle)」というのは、俗語で「男女がいちゃつくこと」だそうです。それから「恋人たちの身投げ台(Lover's Leap)」というのは、実際にブリストルの北西にある絶壁の名所の名前だそうですが、ネットで検索してみると、「Lover's Leap」という地名は、世界中のその手の風光明媚でちょっと危険な(!)名所につけられたよくある名前で、実際に若い恋人たちが身投げをしたという伝説のある所もあるみたいです。

タイコウチ


「スラップ・アンド・ティックル」

ボーイフレンドのマイケルとのデートでは
彼女はまるで聖書みたいに不感症
彼は自慢のゼファーに彼女を乗せる
塩と胡椒の瓶のように並んで座る
街を見渡せる場所がいい
「恋人たちの身投げ台」は見晴らしがいい
車のライトをわざと点滅させて
彼は彼女に愛の言葉を語る
次の晩、彼女に電話をかけると
父親が娘につないでくれない
具合が悪いというのだけれど
絶対嘘に決まってる
マイケルは拒絶され傷つく
こんなことはありえない
近所の酒場に車で出かけ
反社会的な気分にひたる

彼女は彼に会えなくて一晩中泣きくれる
今頃キスしていたかもしれないのに
一方飲み過ぎた彼はふらふらで
酔いを醒まそうとさらに酒をあおり
家に帰ろうとタクシーに乗り
後部座席で酔いつぶれる
まるで赤ん坊のように
久しぶりにぐっすり眠る
翌朝、妹のポーリーンと出かけた彼は
彼女に会う
はにかむ彼女はまた彼のとりこ
彼はクールに気取ってみせる
彼が言うには、今晩チャーリーの店で
パーティーがあるんだ
7時半に待ち合わせしよう
彼女は目の前に天国を思い浮かべた

もしも気が変わったなら
それはよくあることだけど
ピクルスを噛んでいては
彼女といちゃつくことはできない
石を投げなければ
水たまりに波紋はできない

その晩二人はいっしょに踊った
永遠に続く愛に思えた
彼女の脚に手を触れたときの
彼女のせりふは聞きものだった
あとになってまた試してみたが
彼女は気を悪くしたみたい
押し黙ったまま家まで送ろうとした
無理強いはしたくはなかったから
夜景が見たいの、と彼女が言った
「恋人たちの身投げ台」は見晴らしがいい
きれいな空気を吸いたいな
髪をくしでとかした彼女は
彼にキスしようと振り向くが
タイミングをはずし
彼女の手が彼の脚に触れる
彼は彼女の舌の感触を頭に思い浮かべた

もしも気が変わったなら
それはよくあることだけど
ピクルスを噛んでいては
彼女といちゃつくことはできない
石を投げなければ
水たまりに波紋はできない

(訳:タイコウチ)