2009年1月4日日曜日

WHAT THE BUTLER SAW

この曲は、もとはシングル「PULLING MUSSELS (FROM THE SHELL)」のB面で、これまでアルバム未収録だったのですが、最近はベスト盤「THE BIG SQUEEZE」や「THE SQUEEZE STORY」、今年出た「ARGYBARGY」のデラックス版などで聴くことができるようになりました。グレンとクリスにとっては、けっこう自信作だったようですが、アルバム「ARGYBARGY」の制作時には、マイルス・コープランドの意向により、アルバムからはずされてしまったそうです。後知恵かもしれませんが、ビートポップ色の強いあのアルバムでは、たしかにちょっと浮いてしまったかもしれません。

歌詞の内容は、いかにも「映画的」というか、ポップソングとしてはあまりない、いつの時代か、どこかのお屋敷で起きた事件のお話です。主人が欲深い愛人を諍いのはずみで殺してしまい、その後始末をするはめになった執事の姿を描いています。

タイコウチ


「執事が目撃した事件」

明かりの明滅する廊下をゆっくりと進む
片方の目にはビロードの眼帯
男が一歩進むごとに床板がずれてきしみを上げる
現実にまつわる真実を作り上げようと案を練る
しかし彼の執事がドアの穴からこっそり覗いている
この執事の目から逃れることはほとんど不可能

フランチェスカは長椅子に寝そべっている
ふたりは激しい言い争いをする
やがて彼女の肉体がわしづかみにされ
目の前でドレスのファスナーがはじけ飛ぶ
彼女の手袋をした彼の手が彼女の首を締め上げる
ポート酒とブランディを混ぜた愛のカクテル

玄関の明かりと懐中電灯の明かり
霜の降りた朝の芝生
やがて朝の光がマントとなって覆い隠すのは
執事が目撃した事件の結末

彼には自分だけの世界があり
ベルトの内側にしっかり隠していた
しかし彼女はそのベルトをはずしたがり
彼の財産を享受したが、楽しみを知ることはなかった
彼の声がかすれているのはオペラと酒のせい
執事はまだ彼のために忙しく雑用をこなしている

執事は、マントに包んだフランチェスカの死体を
湖まで引きずって運ぶ
どんな探偵もこの痕跡を見つけることはできないだろう
あの老人は正気を失い、震えている
影と足跡と点滅する明かり
執事は夜中まで冷徹な目をして起きている

玄関の明かりと懐中電灯の明かり
霜の降りた朝の芝生
やがて朝の光がマントとなって覆い隠すのは
執事が目撃した事件の結末

(訳:タイコウチ)