「レイ」
ポケットに手を突っこんでため息をつく
年をとるごと頑固になるが、自分ではなぜかわからない
昔はいざ知らず、いまは何をやってもうまくいかない
そもそも中身と格好の違いがわかっていなかったのだ
ああ、レイ
指で脈を確かめてみろ。おい、大声を出すぞ
まわりに気を使うこともやめ、もうくたびれ果てている
今はばねで留められているが、おや、今にもころびそう
ちょっとしたからかいにもすぐに腹を立てる
ああ、レイ
つらい思いもして、今や自分の居場所がわからない
でもだれだって向き合わなければいけない経験だ
ああ、レイ
身代わりの羊の群れを育てながら、傷ついた少年のようにわめく
自分の夢についた脚注になってしまいそう
ああ、レイ
(訳:タイコウチ)
不器用なだけで悪い人間ではないのだけれど、人づきあいがうまくできない、そんな困った中年男のポートレート。